タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / この撮影のあと父の死と、その後のさまざまなできごとがあり同地の写真を発表する気になれないまま四ヶ月が過ぎた。昨年からの新型コロナ肺炎蔓延によって、海の撮影そのものができないまま四ヶ月だ。ふと思う、このトビはどうしているのか。春の陽を浴びて空を飛べているか。
海景 21-001 精神的な入り江
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / そこへ行っても見るべきものはないだろうと何年も足を向けなかった入江だ。抜け道を探すうちいつの間にかここにいた。太陽がぐっと位置を変えるまで眺め続けた。
海景 20-045 漁具倉庫
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潮風で板が釘が掛け金が痛んでいる。漁具倉庫がつくられて、たぶん四、五十年は経っているように思われ、私の年齢を考えれば衰え具合は妥当なのかもしれない。
島の北岸にある[…]
海景 20-044 凪
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / どこに腰を落ち着け暮らすか無頓着ではいられない。どこでもよいと言う人はいるが、それでも交通の便や地形など比較して住処を決めているはずだ。しかし住み暮らす場所を決めるのはなかなかにむづかしく理想通りにならないのは誰もが経験している。私もまた現実に突き返されつつ居住地を決めて現在に至っている[…]
海景 20-043 Winter Light
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平和はそこにあるものではなく、探して見つけ出さなければ存在しないものと気づくのにいったい何年かかったのだろう。
海景 20-042 冬の海
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静けさが海を支配していた。誰もいない。くる気配すらない。焚き火のあとが晩夏の痕跡として磯から続く小さな浜にあるばかりだった。外海を岩礁が隔てた内側はどこまでも澄み切った水が輝いていた。
いつからこんなに関東の磯はきれいになったのだろう。公害という言葉とヘドロやスモッグの禍々しさを子供のとき刷り込まれた私は、大人になってもどんなに美しい海水を見ても疑いの念を払拭できずにいた。そして思う、いま[…]
海景 20-041 赤い水 (Coloured rock pool water)
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何年間も訪れることがなかった岩礁へ行ってみると、ふるびた灯台が撤去され、撤去されるとき重機が入ったかして自然が整理されたような風情になっていた。釣り人さえいない磯で月面をたった一人で歩いているような、もう二度とどこへも戻れないような気分になった。そこに錆びとも油とも見える赤い水が鏡のように朝の光を反射していた[…]
海景 20-040 悲しみの速度
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砂の浜は刻々と姿を変え一ヶ月、一年と月日が経つとおおきく様変わりしてまるではじめて訪れた場所のように見えることさえある。吹き寄せられた砂で埋まり姿を消すものがあるいっぽう、砂が吹き飛ばされ姿を現すものもある。砂の起伏が地形すら変えて記憶と一致するものを探すだけで精一杯になる。
九十九里は屏風ケ浦が侵食され土砂が砂となって流れ着いて広大な砂浜をかたちづくった。一年で50cmから1m[…]
海景 20-039 8:00 a.m.
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どこから見ても展望台の姿をした展望台に登るのは、用意された意図にまんまと乗せられる恥ずかしさを感じ、こんなものは自意識過剰であるとわかっていてもためらいを吹っ切ることができなかった。こうしていったい何年経過しただろうか。
遡れば、はじめて九十九里へやってきて、その後の私の写真を決定づけたモデルさんを[…]
海景 20-038 時間
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子供だった私は大学生の自分、それより大人の自分を想像することができても、思い描いたのは年齢なりの図体であったり、どこかで見聞きした上の世代の様子だった。もちろん当の本人は気づきもしないし、これは大学生になった私が想像する30代、30代になった私が想像する50代であっても変わりない。
私自身の成長や成熟、老いといった変化だけでも想像するのは困難なのに世の中との関わりによってどう人生が揺さぶられるかなどわかるはずがないのだった。そしてむしろ[…]
海景 20-037 陸風
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暑い秋から一転して肌寒い日が続いたが、ふたたび11月とは思えない暖かさになった。未明に家を出る際、それでも寒いのではないかともう一枚厚手の上着を車に積んだ。しかし夜明け前でさえ、そんなものは必要なかった。海辺はほとんどいつもどおりだったが、漁協の軽トラックの行き来が忙しく感じられた。いまから思えば、あれは九十九里に打ち上げられた大量のハマグリを海へ戻すなどするためだったのだろう[…]
海景 20-036 Milvusと海と階段
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鴎(かもめ)と鳶(とび)。どちらも海辺でよく出会う。[…]鳶を撮ろうか。いままで考えすらしなかったことを思った。[…]そして気づいた。鳶はMilvus[…]
海景 20-035 その男とギター
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 海へ続く道をギター片手に歩いてきた男が、ゆっくり砂の山をのぼった。彼は海へ向かって自作の曲を歌った。ずっと歌っていた。
海景 20-034 観察と思考
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 私が知っている海とは別の海を彼は見ていた。同じ海を前にして、なにもかも違う風景を見ていた。
海景 20-033 構成 海辺
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 冬がはじまろとしている光だった。撮影すべきものを見つけられず落胆していた。そのときジョルジョ・デ・キリコ描くところの人物が、砂山の向こうから現れるような気がした。神が配置したような構成が目の前にあった。
海景 20-032 できごと
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / できごとはどれも過ぎ去った過去だ。刻々と過去が堆積して行く。みんな終わった話だ。
海景 20-031 色彩
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 微かな色があるところに光がある。光を追っていると新しい色との出会いがある。この浜のかすかに錆色をした砂と植物の緑と黄色と、漂着物の白さ、海は青から緑のグラデーションを描く。空は群青を薄めて、どこまでも薄めた色をしていた。
海景 20-030 朝の波
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 人それぞれの朝があり、一日があるのを見てほっとしている私がいた。ここでは誰も他人を責めていない。
海景 20-029 いくつかの偶然
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 戯れだったとしても誰かの意図が働いている。でも私にとって出会いは偶然であり、この光景をかたちづくるすべてが偶然の産物だ。では私がここにいるのは必然なのか、どうか。
海景 20-027・20-028 海岸線
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 海が陸に、外なるものが内なるものにここで出会う。相反するものが重なりあうが混じり合いはしない。絶えず流れる風は時代を超越している。とても多様で、とても美しい、とても新しい。
Dawn Chorus Pt.3 (海景 20-026)
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 陽は昇り、砂は流れ、時間は誰にも等しく流れ行く。私が知っているこの場所は既になく、見知らぬ場所になっていた。朝日まで別物に見える。
The sun rises in the east. The sand moves up, down, left, right. Time advances equally for anyone.
海景 20-025 波を待つ
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 私は凪の日の海を眺めていた。海上のサーファーは波の到来を待っているだけで美しかった。静けさがありがたく、いつまでも続けと願った。
海景 20-024 砂州、向き合う波
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 両側から波が寄せて砂州の先を覆い、引いて行く。地球と月と太陽が並べば起潮力が重り砂州は海に没する。
Dawn Chorus Pt.2(海景 20-023)
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 房総半島は50万年前に姿を現し、このかたちへ隆起と成長を続けた。そして関東大震災前、私が立っていた場所は海中だった。いったい何度めの朝なのだろう。
Dawn Chorus Pt.1(海景 20-022)
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / Dawn Chorus (暁の合唱)。夜明けに地球の磁気圏と太陽風の相互作用により生じる鳥の囀りに似た音響が受信される。夜の領域から朝へ回り込んだ電磁波が宇宙から降り注ぐ。Is this a bird song? The electromagnetic dawn chorus is a phenomenon that occurs most often at or shortly after dawn local time. (南房総)
海景 20-021 花束のように
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 房総の白浜は小砂利の海岸だ。やや西へ歩くと粒度が細かくなり砂の浜になる。流木や漂着物がまったくない一画が現れたかと思うと雲間から日差しが降り注いだ。まるで劇場の舞台のような光景が広がった。
海景 20-020 朝に飛ぶ
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 広さと遠さを恐れない鳥を私はずっと見ていた。自宅からはるか離れた海辺で正体が知れない不安に耐えながら。
海景 20-019 反射と回析
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 私が見ているものは光であり反射であり、光が回析した結果であり、ここに意味を与えるものは心の作用でしかない。私が立ち去れば、私が与えた意味もまた霧散する。
海景 20-019 雲の速度を超えて
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 晴れ間と曇り空が入り混じる一日だった。 曇天の向こうへ。雲を追い越す速度で遠くへ。
海景 20-018 渚
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 私がここにこなくても、いま目の前にあるままだったろう。私が死んでも、ずっと続くはずだ。
海景 20-017 Beach Break 2
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 沖から続く大きな海の運動は、浅瀬の底の地形によってうねりを生じ、うねりを崩し、波として目に見える変化を起こす。彼は海の、地球の運動のうえでバランスをとっている。
海景 20-016 河口
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 波が絶え間なく寄せているが川の水は海へ注いでいる。あまりに大きな流れは、大きさゆえに感じることができない。ここは河口だ。
海景 20-015 意志と過程と痕跡
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 彼について知っていことのすべては、この足跡だけだ。
海景 20-014 無題
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 目の前で何かが行われていても、それは私とは関係ない。しかし、この瞬間も遠い先の時間にもまったく無関係なんてことはないのだった。たとえばどこかで人が生まれ、人が亡くなるのもまた。
海景 20-013 過去と将来の間で
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / Between Past and Future. 白化した大粒の貝殻が散らばる砂浜の先に河口があった。枝の目印は誰が立てたものか、あちらとこちらを区分けしているみたいだった。
海景 20-012 平静
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / この一瞬と、この一瞬の前後、不安や動揺がまるでなかった。ありえないような幸福な時間だった。The placidity of everyday life.
海景 20-011Beach Break
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / Continuing forever without end. 永遠があるとすれば、それは波の運動かもしれない。浜へ向かい崩れ変形する波。寄せて、引く。
海景 20-010 日常へ
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / Return to routine. 日常と非日常の境界は常に目の前にある。一歩踏み出せば、そこにある。一歩退いても、そこにある。
海景 20-009 liquid sunshine (sun shower)
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / こんなに明るいのに、雨が強くなってきた。
海景 20-008 渚にて / On the beach
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / あからさまなまでに陽にさらされている。しかし知り得ないもので満たされている。そんな、それぞれの渚にて。
海景 20-008 横風 In her case.
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 横風について、彼女の場合。(一部人工着色)
海景 20-007 誰か
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 過去。痕跡。
海景 20-006 私は湿度を見ていた
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 私は湿度を見ていた。大気が示すものを見ていた。言葉はまだここまで到達していない。
海景 20-005 いやな天気だ
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 晴れ間が見えたと思ったら、西から黒い雲がやってきた。また降り出した雨は、やがて激しさを増すだろう。それでなくても靴と靴下はびしょ濡れなのに。
海景 20-004 岩礁への上陸
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 岩礁のうえで真夏の太陽に焼かれる。