海景 20-040 悲しみの速度

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砂の浜は刻々と姿を変え一ヶ月、一年と月日が経つとおおきく様変わりしてまるではじめて訪れた場所のように見えることさえある。吹き寄せられた砂で埋まり姿を消すものがあるいっぽう、砂が吹き飛ばされ姿を現すものもある。砂の起伏が地形すら変えて記憶と一致するものを探すだけで精一杯になる。

九十九里は屏風ケ浦が侵食され土砂が砂となって流れ着いて広大な砂浜をかたちづくった。一年で50cmから1m侵食されていた屏風ヶ浦に波消しブロックを置くようになると砂の供給が絶たれ九十九里はやせ細った。見る影もなくなった浜がある。しかし不動堂は豊かな砂の堆積が続いているように見えた。訪れないうちになにもかも変わっていた。

私は途方もない悲しみを感じた。悲しみが急速度で押し寄せてきて、空間を満たし、はるか彼方へ遠ざかって行った。もちろん私の感情がおかしな反応をしたのはわかっている。すくなくとも私にとって砂と砂で満たされた空間は尋常ではない感情を生じさせる触媒になる。幾度か書きもし話もしたが、砂は時間そのものを示しているように思われるのだ。

海景 20-040 悲しみの速度
額装海景 20-040 悲しみの速度

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    加藤(文)文宏 / Fumihiro Bun Kato 写真家・作家 / Photographer Author ・北海道北見市生まれ。 ・大学卒業時までに詩集「無題あるいはサラバ」、同「Cadenza」発表(共に絶版、在庫なし。「Cafebza」別装丁私家版のみあり)。 ・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画・取材、Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告、武田薬品工業広告、他。 ・長編小説「厨師流浪」で作家デビュー。小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・各メディアにおけるスチル撮影。 ・オリジナルプリントの製作、販売。 ・JSAHP正会員
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