タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / なにがどうと敢えて言う必要はないだろうが、遠い場所で遠い景色を撮影できずにいる。2月、私はこうした事態をうっすら想像していた。3月のはじめ、ものごとはよい方向へ向かっているように感じた。だが、そう感じられたのはほんの数日だった。いま花を見て、花を通して遠い世界へ行こうと試みている。花の向こうにある景色を見つけるために。
ハナ 2020-011 Tulip #2
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / あのチューリップ型の花はつぼみと大して変わらない。チューリップも他の花のように花びらが開ききったときはじめて開花と呼べるようになる。チューリップを撮影し続けわかったことだ。
ハナ 2020-010 Tulip #1
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 2020年はじめてのチューリップだ。球根を植え春を待っていた。例年チューリップを開花させるのはステージに立たせ撮影するには切り花ではだめなのだ。冬に芽生えはじめ、寒さのなか葉を伸ばし、つぼみをつけ、開花し、やがて散りゆくまで見極めなければ撮影できない。
砂景 20-006 越境者と廃ガソリンスタンド
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 「ここまで」と「ここから」が接する場所だ。越えてはならないとされ、越える為には何かを失わなければならないが、 それでも越えようとするのは越えた先で何かを得られる期待ゆえ。欲望と確執が高まる場所だ。
砂景 20-005 風速と光量
突風が去った一瞬の静寂にシャッターを切ると、再び凄まじい砂つぶてが飛んできた。 風の起点はどこなのだろう。光は頭上はるかかなたの太陽から降り注いでいるのだが。
葬送 シジュウカラ 20-2
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / シジュウカラのメスは胸の黒線が細く薄い。シジュウカラを葬った日の翌日、埋めた場所の間近にスピィッ、スピィッと甲高く鳴くオスのシジュウカラがいた。つがいだったのだろう。昨日からずっと探して、妻を見失った場所に戻ってきたのか。オスのシジュウカラが鳴き止むまで、私は撮影した亡骸の柔らかな丸みを目で追うほかなかった。
葬送 シジュウカラ 20-1
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 朝、春とは言えぬ冬でもない明るさのなかシジュウカラの亡骸があった。ガラスを空と見誤ったのだ。鳥を葬るのは、これが三度目だ。 土を深く掘り、横たえ、土をかけ、石を乗せる。なぜ、そうするのか。それは私が人間だから。
惑星と文明 20-005 強風と砂とTの肖像
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 真正面から吹き付ける太く同時に鋭い風にもびくともしない構造物のそばで、なぎ倒されそうになりながら海の方角を見ていた。黒い浜辺のずっと向こうを。
フローラ 20-001 剣山に立つ芽キャベツ
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 芽キャベツの季節なのだから、もう春だ。なぜかまだ冬であってほしいと思う気持ちはどこからくるのか。
砂景 20-004 Surfer
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 私にはわからないものが、彼を動かしている。そのわからないものに、私の気持ちが動く。
砂景 20-003 Surfers
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / その先にあるものは、その場所に至るときまで何ものかわからない。その場所に触れたとき実感できるものは、次の瞬間別ものに変わる。
ハナ 2020-009 Rosemary #2
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 今朝、ローズマリーの隣にパセリのプランターを移動させた。雑草を抜き、越年した株の隣に種から発芽させた苗を植えた。そしてまたパセリの苗をつくるべく種を蒔いた。なぜかタイムを上手く育てられたためしがないが、ローズマリーとパセリはいつも私を幸せにしてくる。
海景 20-003 老船員のいる海景
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / ここにくるまでの道筋、ずっと雨が降っていた。雨雲はいま沖合にある。老船員は光る海を見ていた。ごうごうと空が鳴っていた。
ハナ 2020-008 Rosemary #1
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / いったい何株ローズマリーを育ててきただろうか。今月に入り、幾株かあるうちのひとつが数えきれぬほど花をつけた。枯れる間際にローズマリーが花盛りになるのを私は知っている。
惑星と文明 20-004 砂上にてYの肖像
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / こんなポートレイト / 肖像写真があってもいいとY君は言った。傘が必要と思ったのは私だが。
惑星と文明 20-004 参考掲載 砂の廃屋と椅子
タイトルをクリックあるいはタップした先に大きめの画像があります / 誰かが最後に座ってから、いったいどれくらい時間が経過しているのだろう。
砂景 20-002
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 地図を頼りに歩いてたはずなのに、このあと私は正反対の方角へ進んでいた。歩いてきた方角へ後戻りするつらさを想像したとき、このまま間違った方角へ進もうと思った。そちらへ行けば、ますます目的地から遠ざかり何もかも無に帰すのに。
海景 20-002 結界と海景
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます/ 旗竿をくくりつける柱が、世界の意味を区切っている。旗を立てるためにあるのは知っている。だが用途なんてどうでもいいくらいに、こちちとあちらを分けている。
惑星と文明 20-003 時間は砂となって降り積もる
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / メヒコシティの空気の密度が薄いのに気づいたときタクシーは旧市街地のグランオテルを目指していた。それからずっと意識はぼんやりしていたのかもしれない。直裁な紫外線が水分を含まぬ大気をまっすぐ進み空気遠近法が存在しない空間にも翻弄された。そして湿度を再び感じたのは三日後砂漠から海へ下る途中だった。あれから二十数年、わたしはずっとぼんやりしたままかもれしない。
砂景 20-001
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 越えた先に何があるか知らない。越えようとしても登るのは無理だ。息を切らし、ここまできたというのに。
惑星と文明 20-002 時間は砂となって降り積もる
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / この屋根、この柱、この壁を見つけて安堵した。砂の世界を歩きつづけて、人が人として安住できる場所にほっとしたのだ。人が住むべき建物ではないのは知っているが懐かしくさえ思ったのである。
Past Light 20-006 漂着
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 植物だろう。しかし名前は知らない。誰かが持ってきたものではないだろうから流れついたのだろう。どこから? どうやって? わからない。なぜ、こんな姿で。どうして私と出会ったのか。
Past Light 20-005 桟橋にて
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / ずっと私は水に落ちた自分を想像して身構えていた。馬鹿らしいけれど、ずっと怯えていた。落ちたら泳げばいいし、ここは泳ぐほどもない深さなのに。この世ではないものを海面に見ていたのだ。
Past Light 20-004 桟橋から
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 服を着ていると遠浅の海岸さえ水に落ちるのが怖くなる。水着なら、素裸なら、怖くはない。
Past Light 20-003 ナミエボウル
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 記憶の中にあるボーリング場とナミエボウルは別物で、私が勝手にセンチメンタルな気分になっているにすぎない。ここで遊び、ここを見て生きてきた人の気持ちと重ね合わせるのはやめよう。ナミエボウル前を通る国道を南相馬方面へ進むと開口部をベニヤで封鎖したセブンイレブンがあった。このセブンイレブンは、2020年現在アルバイト店員を募集している。
Past Light 20-002 浪江の家
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 既に何もかもが変わり、この景観は過去のものだ。あるものがなくなり、ふたたび始まる。私が暮らす場所より、浪江は圧倒的な速度で9年が過ぎさった。2020年、人々の帰還が進み、国道6号の二輪通行不可制限もなくなる。この季節、この時間に太陽は同じ場所を運行しているが、過ぎ去った光を見ることは二度とない。
Past Light 20-001 ある壁
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 光との出会いは数多くの偶然とほんの一握りの必然に左右され、その光について思う時すでに過去のものになってこの世には存在しない。そして二度と出会えないのだった。まだ季節は冬だが、ここには春が兆していた。
海景 20-001 何気ない海景
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます/ とりたてて何事もなく、何事も起こっていないようにすら感じる退屈を真の幸福と呼ぶべきかもしれない。いまこのとき悲惨や幻滅や堕落や破滅が始まりつつあり、何かが音を立てて崩れているのは確かだが、私の目の前にある幸福を幸福と思うほかないではないか。
惑星と文明 20-001 時間は砂となって降り積もる
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / だんだんどうでもよくなる感覚はなかなかよいものかもしれない。吹き付ける風に煽られるに任せて、ずっとここに立って、ずっと海を見ている。三途の川ならぬ三途の海を前にした気分だ。
ハナ 2020-007
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます /花は、既に春だった。そして何も気づかぬまま冬の部屋に飾られている。春はまだ先だが、年齢とともに時間の経過が加速しているからきっとすぐ巡ってくるに違いない。味気ないとも[……]
ハナ 2020-006 Anthurium #6
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / アンスリウムの花言葉は、「情熱」「印象深い」。へえー。適当なものだ、花言葉なんて。取り立てて好きな花ではないし、プラスチックのような質感と単純極まりない赤い色が特徴の品種仏炎苞はむしろ嫌悪感すら感じるのだが素通りできないものがある[……]
ハナ 2020-005 Anthurium #5
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / 花言葉は誰がどのようにして決めて、どこに集約されているのだろう。自然発生的に生じた花言葉が19世紀に花言葉辞典としてヨーロッパでまとめられたらしいが、新たに発見された植物の花言葉は誰がどうのようにして決めているのだろう。さて、どうしたものかとアンスリウムを見るといつも思う[……]
ハナ 2020-004 Anthurium #4
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます / ひとりきりがもしかしたら一番心地よいのかもしれない。そう言い切る自信はないが、そう考える自分もいるといったありさま。そして[……]
ハナ 2020-003 Anthurium #3
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます/ 取り立てて話題はないが、一言も発しないままなのも落ちつかない状況というものがある。独り言でなく、会話についてだ。たぶん、これと同じなのだ。さて、どうしたものかとアンスリウムを見るといつも思う。取り立てて好きな花ではないし[……]
ハナ 2020-002 Anthurium #2
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます/ Anthurium / アンスリウム さて、どうしたものかとアンスリウムを見るといつも思う。取り立てて好きな花ではないし、プラスチックのような質感と赤い色が特徴の品種仏炎苞はむしろ嫌悪感すら感じるのだが素通りできないものがある。異質である。異様である[……]
ハナ 2020-001 Anthurium #1
タイトルをクリックあるいはタップした先で画像を拡大することができます/ Anthurium / アンスリウム 異質である。異様である。美しい。生々しい。淫靡もしくは卑猥かもしれない。植物であるため許されている。