2021年新しい年に

新しい年が巡ってきました。それなりに難しく、どうしたらよいか解決策が見当たらない困難さをどうしても感じざるを得ません。

みなさんへのご挨拶が遅くなったのは、こうした新型コロナ肺炎のつらい局面があっただけでなく、昨年末から現在まで悲しいできごとが身辺を満たしていて何をどのように言葉にしたらよいかさっぱり答えがみつからなったのです。それ以前に何も話したくなかったのです。

身内の誰もが予想だにしなかった出来事のなか父が亡くなりました。事故といえば事故、年齢からすれば天寿をまっとうしたとも言える最期だったかもしれません。ただし遺体発見までの日々があり、発見後も新型コロナ肺炎禍からの医療の逼迫による検死の遅れと年末年始によって荼毘に付すまで時間がかかり、こうした日数の経過があったので葬儀一切を大急ぎでやらなければならず、さらに老いた母の健康を考えると肺炎禍のいま私は葬儀へ出向くのもかないませんでした。

人の生き死になんてものは自然現象に過ぎないのでしょうが、順序であるとか、区切りであるとか、これらをはっきりさせる儀式が伴わないと残った者にとって整理が一切つかないのだと思い知らされました。骨格からして姿かたちが似ている父の骨が、あまりの太さで骨壷に収めるのがたいへんだったと聞いて、伝聞ゆえにまるで自分の骨の話のように思え気が遠くなったのも、まさにこれです。

心細いのです。自分自身の生き方、死に方が途方もなく遠いところへ吹き飛ばされて迷子になった気がするのです。世界のほころびが新型コロナ肺炎によって大きくなり、さまざまな局面でことさら分断を煽る言説が目立つようにもなり、混沌のなか気持ちを真っ当に保つのさえ難しいのが拍車をかけています。

だから、花を父と自分と世界に捧げようと思います。いま、ほかにできることがあるのでしょうか。きっとこんなことを、こんな場所で言うべきではないのですが「助けてくれ」と。

2021 Flower
加藤(文)文宏 / Fumihiro Bun Kato 写真家・作家 / Photographer Author ・北海道北見市生まれ。 ・大学卒業時までに詩集「無題あるいはサラバ」、同「Cadenza」発表(共に絶版、在庫なし。「Cafebza」別装丁私家版のみあり)。 ・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画・取材、Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告、武田薬品工業広告、他。 ・長編小説「厨師流浪」で作家デビュー。小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・各メディアにおけるスチル撮影。 ・オリジナルプリントの製作、販売。 ・JSAHP正会員
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