海景 20-039 8:00 a.m.

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どこから見ても展望台の姿をした展望台に登るのは、用意された意図にまんまと乗せられる恥ずかしさを感じ、こんなものは自意識過剰であるとわかっていてもためらいを吹っ切ることができなかった。こうしていったい何年経過しただろうか。

遡れば、はじめて九十九里へやってきて、その後の私の写真を決定づけたモデルさんを撮影したのが東金から海へ向かった先の不動堂、真亀、白里あたりだった。レンタカーで移動しつつ撮影したのだが、記憶の中の風景は現在とまるっきり違い閑散として寂しさを感じるもので、不動堂の展望台も当時はなかったのではないだろうか。あったなら興味を示すモデルさんであったし、私もためらうことなく撮影に使ったはずだ。

つまりいつの頃からか、私は誰かが用意した楽しみを素直に楽しめない人間になっていた。

この朝、はじめて展望台にあがった。真っ正面の海に午前八時の太陽があった。海鳥が目の前を群れ飛んだ。眼下の浜を歩く人々。目を射る明るさと正反対の暗さが同居していた。この風景は、ここにしかないものだった。そして私は気持ちを軽くした。

海景 20-039 8:00 a.m.
額装海景 20-039 8:00 a.m.

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    加藤(文)文宏 / Fumihiro Bun Kato 写真家・作家 / Photographer Author ・北海道北見市生まれ。 ・大学卒業時までに詩集「無題あるいはサラバ」、同「Cadenza」発表(共に絶版、在庫なし。「Cafebza」別装丁私家版のみあり)。 ・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画・取材、Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告、武田薬品工業広告、他。 ・長編小説「厨師流浪」で作家デビュー。小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・各メディアにおけるスチル撮影。 ・オリジナルプリントの製作、販売。 ・JSAHP正会員
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