AMOR 8

一時的に退院して撮影。

病室の天井を眺めるほかなかった時間から解放されたが、死について考えた私が消えて無くなった訳ではなかった。私は最小限の養分と最大量の抗菌剤を点滴されて生きていた。プラスチックの容器から滴り落ちるこれらは、腕の静脈に刺されて固定された針から体内に入り込んでいた。気が滅入るなか、あと何十年あるいは何年間後に死ぬときも、この風景そっくりな世界を見ながらなのだろうと思った。そして苦痛があろうとなかろうと睡眠に落ちるように死ぬ。たぶん、こうして死ぬ。死ねば、直前の意識も記憶も無になり、とうぜんその後もないのである。気がつけば天国ではなく、気がつくこともないのだ。これは愛についての、ひとつの、そして核心についての思考実験でもあった。

Fumihiro Kato.  © 2017 –

AMOR 7 愛について オリジナルプリント 加藤文宏 加藤文 作品

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